肌の保湿と角層の働き者

スキンケア

肌が水分を含んだなめらかな状態に保つのことは、多くの人が望むことだと思います。乾燥して肌の水分が少なくなると、肌はかさかさし白っぽくひび割れたり、ざらついた状態の肌になってしまいます。

肌が正常な状態であれば、わざわざクリームなどで保湿を加えなくても、湿った空気から水分を補充したり、乾燥した環境下でも水分を維持し、柔軟さを失いません。正常な角層には吸水能力と水分保持能力があるため、少しでも皮膚に水がつくと瞬時に水を吸い、1分以上かけてゆっくりとその水を放出するそうです。お風呂に浸かると皮膚(肌)は水分を大きく吸収する訳ですが、15~30分も経つと入浴前に戻ってしまうようです。

角層は薄く広がった角層細胞が何層も積み重なり、その間をセラミドという高分子の脂が主体の細胞間脂質が埋めるという構造をしており、これが物質の通り抜けを妨げ、肌のバリア機能として役目を果たします。さらに、細胞間脂質はラメラ構造という水と脂が交互に層状に並んだ構造をしており、非常に乾燥した環境でも、一定量の水を分子の状態の結合水として脂質の間につなぎとめています。

そして、ケラチノサイトからできたばかりの最下層の角層細胞は無構造なタンパクの塊ですが、それが上層に移動するに連れて、角層内のタンパク分解酵素によりその一部の角層タンパクが分解され、水溶性のアミノ酸がたくさんできます。これが角層細胞内で水と結合し、膨れることで肌に柔軟性を与えています。

角層細胞のケラチン線維は、フィラグリンという基質タンパクにがっちりと固められた構造をしています。とは言え、フィラグリンも角層細胞が下方から上方へ移動する際に、タンパク分解酵素により、次第にアミノ酸に分解されています。そして、できたアミノ酸が、角層が水と結合したり、柔軟性や肌表面のなめらかさを保つのに重要な役目を果たしているのです。

実は皮脂も肌の水分が蒸発するのを防ぐのに一役目を果たします。男性だと男性ホルモンの影響で毛穴から分泌される皮脂が、肌の表面をおおうことで蒸発をある程度防ぎますが、その一方で毛穴に溜まってしまうとニキビの原因になってしまいます。女性は30歳を過ぎるあたりから皮脂の分泌が減少するため、乾燥する冬には皮脂の少ない腰回りや脛(すね)がかさつき、かゆくなったりします。

基礎化粧品はそのような水分が不足するのを防ぐための重要な防御法になるものです。角層では様々な細胞などが水分を保つのに必死で働いていますが、加齢や環境などでどうしても防御力が弱くなっていきます。ですが、しっかりスキンケアすればまだまだ肌をやわらかく、みずみずしく保てるのです。

参考:田上八郎「皮膚の医学」(中公新書)

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