がん細胞と制御システム
私たちの体を侵す怖い病気として知られているのが「がん」です。厚生労働省の調べでも日本人の死亡原因第1位は圧倒的にがんです。
今や2人に1人がかかるとも言われているがんですが、どうしてがんというものができてしまうのでしょうか?しかも一度がん細胞ができてしまうと、次々と増えてしまい、全身に広がってしまい命を脅かす存在となってしまいます。がんに関する内容は複雑ですが、ここでは細胞制御に焦点をあてて見てみましょう。
私たちの体の中で細胞は常に一定数に維持されています。細胞の生まれ変わりを考えると、古い細胞がなくなる分だけ、新しい細胞が補充されます。そして、その維持は遺伝子によってなされています。細胞を増やす遺伝子は通常タンパク質によっていわばスイッチのオンとオフを切り替えていますが、その遺伝子に異常が起きると細胞が増えてづけていきます。それががんです。
細胞が分裂する前にDNAは必ず2倍になり、それも正しく制御されています。しかし、その制御が破綻してしまうとDNAの量が変化してしまい、それががん細胞になる可能性へとつながっていくのです。要するに正しく制御されていることが大事であり、その制御に異常が生じるとがん化してしまう恐れが生じるのです。
細胞は「アポトーシス」という自爆装置に似た仕組みを備えています。その結果、全体数の制御がなされており、また細胞がダメージを受けたりしたとき、細胞が自己の持つ修復レベルを超えていると判断すると細胞を丸ごと破壊してしまうそうです。他にもDNAに異常があった時にもアポトーシスが発動され、がん細胞が生まれる前に自爆することで細胞の数を制御します。
私たちの体の内部では常に細胞が生まれ変わっています。見た目は何ら変わらないのに内部では想像を絶する数の細胞が日々生と死を迎えているのです。それによって私たちの体は維持されており、さらにその維持には細胞を制御する仕組みがとても重要な事が分かるかと思います。
ではその制御はどうして破綻してしまうのでしょうか?それはやはり老化も大きく関わってくるようです。年を取って老化が進んでしまうと、細胞を維持する力が劣ってきてしまうのです。医療が高度化して様々な治療法が確立されて私たち人間の寿命もどんどん延びてきました。長生きできるようになった分、体の内部では老化と共に制御システムが古くなっていき、がん化へとつながる細胞の異常増殖が起きてしまうのです。
老化とがんとの関係は切っても切れない仲だとも言えますが、他にも食生活や喫煙、飲酒、運動なども大きく関わってきます。国立がん研究センターでも「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」「感染」の6つの要因を重視しています。がんに侵されない体にしていくためにもそれらの要因を考え、予防をしていくことが大事です。
参考:池上彰「池上彰が聞いてわかった生命の仕組み 東工大で生命科学を学ぶ」(朝日新聞出版)