生薬とは? ~ 自然の産物 ~
医薬品やサプリメントなどで耳にすることが多い「生薬」という言葉ですが、そもそもどのような物なのでしょうか?何となく「生薬配合」と聞くと「体に優しくてよいもの」と想像してしまう方も多いのではないでしょうか?
ですが、薬として服用する割にはあまりにも生薬に関する知識がないなと感じてしまうこともあると思います。詳しく調べることはあまりに緻密で繊細な知識を必要としていくことになるので、ここではそもそも「生薬とは何か」だけ見てみることにしましょう。
人類は有史以来、様々な植物を薬として使用してきました。日本でも多くの地方で、植物を用いたその土地にまつわる独特の民間伝承が存在します。それらの植物の発見は偶然の所産だったようで、多くの植物をかじったり、食べたりする施行錯誤を繰り返すことで、偶然にも薬としての効果がある植物を見つけたのが知識として伝承されていきました。世界を見ると紀元前4000年~3000年頃の時代でメソポタミアの粘土板に病気や医薬の記載があり、古代エジプト、中国やインドでも同様に薬に関する記述が見つかっているそうです。
現代医療が発達する中、そのような民間伝承法は薄れていっていますが、植物そのものは現代の医療においても薬として体系化された上で用いられています。植物や動物、鉱物などの天然物は様々な物質が混ざった混合成分として存在しますが、その中から単一の成分を取り出すことを精製といいます。生薬とはそのような精製を行わずに混合成分のまま用いる薬のことです。天然物は植物由来のものが多くを占めます。新鮮のまま用いることもあるようですが、多くは乾燥させたり抽出や蒸留などの操作を加えたうえで薬として流通されているようです。
厚生労働大臣が定めた『日本薬局方』(医薬品の規格基準書である公定書)によって医薬品はその規格が定められていますが、生薬もその中で同様に定められています。ただ、同書で記載されている生薬は厳密な規定が可能なものだけで、約300種が定められていますが、実際にはその倍以上の生薬が流通しているそうです。
生薬は植物や動物、鉱物などの由来の素材を精製せずにそのまま用いるのが特徴であることがわかりました。私たちの身の回りにある生薬としては、甘草、桂皮(シナモン)、大黄、(朝鮮・高麗)人参などがあります。上手に用いれば私たちの体に多くのメリットをもたらしてくれる生薬。古来から現代まで生薬が私たちの健康を支えてくれていると言っても過言ではないでしょう。
参考:斉藤和季「植物はなぜ薬を作るのか」(文春新書)